西武鉄道に乗って
8時49分、飯能行きの急行列車は3番ホームを滑り出し池袋駅を出発した。埼玉方面を目指し北西に進路をとって列車は進む。
車内はそれほど混みあっていたわけでもなく、座れる席を見つけて容易に落ち着くことができた。車内の様子をうかがっていると、乗客の中にはリュックを背負い歩きやすいスポーツシューズやウォーキングシューズなどを履いてる方が何人かおられた。この人達もひょっとしたら秩父霊場を目指しておられるのかもしれない。或いは秩父の手前の山々へ新緑を楽しみがてら散策に行かれるのか・・・。いずれにしても都会の喧騒から暫し抜け出して、静かな自然の景色の中でひと時を楽しもうとされている人達なのだろう。こういった人達の姿を見ると、なんだかうれしくなる。
列車は練馬区・東久留米市を抜けて、所沢市へとさしかかる。池袋を出発してから時間にすると40分は経過していただろうか。ここからいよいよ本格的に埼玉県内に入っていく。所沢市を通過し、入間市に入った辺りから車窓の景色の様子が少々変わってくる。都内を走っている間に見えた景色といえば、家々の密集する住宅街ばかりだったように思える。人工色が強く、自然の入り込む余地もない、そんな眺めが延々と続いていた。個人的にはこういった景色はあまり好きではない。とりたてて目を引くようなものを見つけることはできないし退屈するのだ。なにかしら自然を感じさせるものが僅かでも景色に織り込まれているほうが心が和む。武蔵藤沢という駅を通過する辺りから、ようやく自然の木々が線路沿いに姿を現わし始めた。そして視界が拡けてきたように思えた。この駅の少し先には航空自衛隊の基地があるのだが、それも影響してのことかもしれない。建物の密集度が少なくなってきたようだ。更に進むと稲荷山公園というものもあり、車窓の景色はかなり自然色が強くなってくる。ようやく東京のベットタウンといわれる地域を抜けたということになるのだろうか・・・。関西育ちの僕には正直どのあたりまでがそういった地域になるのかよくわからないのだが・・・。なにはともあれ、車窓の眺めが楽しくなってきた。
9時40分、飯能に到着。
ここから西武秩父駅へ向かう普通列車(西武秩父線)に乗り換える。ゾロゾロと車内を出てゆく乗客の皆さんに従ってホームに降り立つと、隣の乗り場には既に秩父行きの列車が停まっているのが見えた。下車したほとんどの乗客の皆さんはそちらに向かっている。「そうか、みんな自然が恋しいんやな・・・」なんてどうでもいいことを考えながら、自分も列車に向かう。
数分後、列車は飯能を出発。秩父盆地へ到る山岳地帯の中を列車は進んでゆく。当然の事ながら、車窓の眺めもこれまでのものとは全く異質のものとなる。もはや「東京」というものを感じさせる要素は何一つ見当たらない。景色一面、美しい自然に満ち溢れていた。穏やかな秋の山の風景が車窓いっぱいに広がっている。
まるで夢を見ているような感覚だった。列車を乗り換えた途端、こうも景色の様子が変わるなんて・・・。ほんの数十分前まで見ていた街の景色はなんだったのだろうか。短時間で全く違う世界に足を踏み入れたような気にさせられる。この劇的な変化はとにかく面白い。(心の中で『西武鉄道バンザイ!!』とワケのわからないことを言っていた自分は違う意味で面白い・・・。)
吾野という駅を通過した時の景色はなんともいえなかった。穏やかな山村が広がり、山々の木々が若干ではあったが葉の色を変えつつあった。典型的な日本の田舎の秋の景色とでもいったらいいのだろうか。もう少し時期を遅らせてここを訪れたならば最高の秋の景色に出会えていたかもしれない・・・と少々欲深いことを考えながら窓の外の眺めに見惚れていた。
芦ヶ久保という駅を過ぎ、トンネルを2つくぐると横瀬の町が見えてくる。長い山岳地帯を抜けて、ようやく秩父盆地に入ったのだ。飯能からここまで、時間にすると50分ほどだろうか。列車で一時間近くかかる道程だが、昔の人の往来の様子はどんなものであっただろうか・・・と、ふと考えさせられたりもした。
横瀬という町は秩父霊場のエリア内といえる。町内には六番・七番・九番札所があり、更に芦ヶ久保方面に進めば八番札所に詣でることができる。横瀬の駅で下車する人が結構いらっしゃったが、旅の効率性を考えて皆さんそうされたのだろうか?まずは6番から九番まで打とうと・・・。結局、この列車に乗っていた乗客の多くが秩父霊場の巡礼者だったことになる。あらためて、関東における秩父霊場の存在の大きさというものを感じさせられた。
僕は「順打ち」ということに拘りをもっているほうなので、もちろん一番札所から巡拝するつもりだった。横瀬で下車するわけにはいかない。このあたりが、融通がきかないというか、頑なというか・・・。しかし、巡礼のはじまりはやっぱり一番からという思いは捨てきれないのだ。
横瀬を出発した列車は羊山公園を通り抜けて、いよいよ終点の西武秩父駅に向かう。トンネルを抜け出たときの景色の変わり様にまた驚かされた。いきなり「街」というものが出現した!そんな感じだ。横瀬の町の景色はそれまで眺めてきた山の景色と比べるとそんなに違和感もなく、「良き山里」といった雰囲気だった。その景色が一変した。建物はずらりと並んでいるわ、車はよく通っているわ・・・。まさに山中に現れた桃源郷といったらよいのだろうか。
(おもしろい所やっ!!やっぱり来てよかった・・・!!)
10時30分、西武秩父駅に到着。東京からおよそ2時間の列車の旅だった。
改札を通って駅の外に出る。迎えてくれたのは晴れ渡った秋の空だった。初日から本当にいい天候に恵まれたことが有難い。青々とした空に浮かぶ雲の姿がとても美しく見えるのは、やはり秩父盆地の澄み切った空気によるものだろうか。とうとう秩父の地に来ることができたのだ。それもこんなに爽やかな秋晴れの日に・・・。
『西武秩父駅。駅前に植えられた木々がとても印象的だった。閑静な駅前の景色にとても合っていて、青い空に映えてとてもきれいに見えた。』
8時49分、飯能行きの急行列車は3番ホームを滑り出し池袋駅を出発した。埼玉方面を目指し北西に進路をとって列車は進む。
車内はそれほど混みあっていたわけでもなく、座れる席を見つけて容易に落ち着くことができた。車内の様子をうかがっていると、乗客の中にはリュックを背負い歩きやすいスポーツシューズやウォーキングシューズなどを履いてる方が何人かおられた。この人達もひょっとしたら秩父霊場を目指しておられるのかもしれない。或いは秩父の手前の山々へ新緑を楽しみがてら散策に行かれるのか・・・。いずれにしても都会の喧騒から暫し抜け出して、静かな自然の景色の中でひと時を楽しもうとされている人達なのだろう。こういった人達の姿を見ると、なんだかうれしくなる。
列車は練馬区・東久留米市を抜けて、所沢市へとさしかかる。池袋を出発してから時間にすると40分は経過していただろうか。ここからいよいよ本格的に埼玉県内に入っていく。所沢市を通過し、入間市に入った辺りから車窓の景色の様子が少々変わってくる。都内を走っている間に見えた景色といえば、家々の密集する住宅街ばかりだったように思える。人工色が強く、自然の入り込む余地もない、そんな眺めが延々と続いていた。個人的にはこういった景色はあまり好きではない。とりたてて目を引くようなものを見つけることはできないし退屈するのだ。なにかしら自然を感じさせるものが僅かでも景色に織り込まれているほうが心が和む。武蔵藤沢という駅を通過する辺りから、ようやく自然の木々が線路沿いに姿を現わし始めた。そして視界が拡けてきたように思えた。この駅の少し先には航空自衛隊の基地があるのだが、それも影響してのことかもしれない。建物の密集度が少なくなってきたようだ。更に進むと稲荷山公園というものもあり、車窓の景色はかなり自然色が強くなってくる。ようやく東京のベットタウンといわれる地域を抜けたということになるのだろうか・・・。関西育ちの僕には正直どのあたりまでがそういった地域になるのかよくわからないのだが・・・。なにはともあれ、車窓の眺めが楽しくなってきた。
9時40分、飯能に到着。
ここから西武秩父駅へ向かう普通列車(西武秩父線)に乗り換える。ゾロゾロと車内を出てゆく乗客の皆さんに従ってホームに降り立つと、隣の乗り場には既に秩父行きの列車が停まっているのが見えた。下車したほとんどの乗客の皆さんはそちらに向かっている。「そうか、みんな自然が恋しいんやな・・・」なんてどうでもいいことを考えながら、自分も列車に向かう。
数分後、列車は飯能を出発。秩父盆地へ到る山岳地帯の中を列車は進んでゆく。当然の事ながら、車窓の眺めもこれまでのものとは全く異質のものとなる。もはや「東京」というものを感じさせる要素は何一つ見当たらない。景色一面、美しい自然に満ち溢れていた。穏やかな秋の山の風景が車窓いっぱいに広がっている。
まるで夢を見ているような感覚だった。列車を乗り換えた途端、こうも景色の様子が変わるなんて・・・。ほんの数十分前まで見ていた街の景色はなんだったのだろうか。短時間で全く違う世界に足を踏み入れたような気にさせられる。この劇的な変化はとにかく面白い。(心の中で『西武鉄道バンザイ!!』とワケのわからないことを言っていた自分は違う意味で面白い・・・。)
吾野という駅を通過した時の景色はなんともいえなかった。穏やかな山村が広がり、山々の木々が若干ではあったが葉の色を変えつつあった。典型的な日本の田舎の秋の景色とでもいったらいいのだろうか。もう少し時期を遅らせてここを訪れたならば最高の秋の景色に出会えていたかもしれない・・・と少々欲深いことを考えながら窓の外の眺めに見惚れていた。
芦ヶ久保という駅を過ぎ、トンネルを2つくぐると横瀬の町が見えてくる。長い山岳地帯を抜けて、ようやく秩父盆地に入ったのだ。飯能からここまで、時間にすると50分ほどだろうか。列車で一時間近くかかる道程だが、昔の人の往来の様子はどんなものであっただろうか・・・と、ふと考えさせられたりもした。
横瀬という町は秩父霊場のエリア内といえる。町内には六番・七番・九番札所があり、更に芦ヶ久保方面に進めば八番札所に詣でることができる。横瀬の駅で下車する人が結構いらっしゃったが、旅の効率性を考えて皆さんそうされたのだろうか?まずは6番から九番まで打とうと・・・。結局、この列車に乗っていた乗客の多くが秩父霊場の巡礼者だったことになる。あらためて、関東における秩父霊場の存在の大きさというものを感じさせられた。
僕は「順打ち」ということに拘りをもっているほうなので、もちろん一番札所から巡拝するつもりだった。横瀬で下車するわけにはいかない。このあたりが、融通がきかないというか、頑なというか・・・。しかし、巡礼のはじまりはやっぱり一番からという思いは捨てきれないのだ。
横瀬を出発した列車は羊山公園を通り抜けて、いよいよ終点の西武秩父駅に向かう。トンネルを抜け出たときの景色の変わり様にまた驚かされた。いきなり「街」というものが出現した!そんな感じだ。横瀬の町の景色はそれまで眺めてきた山の景色と比べるとそんなに違和感もなく、「良き山里」といった雰囲気だった。その景色が一変した。建物はずらりと並んでいるわ、車はよく通っているわ・・・。まさに山中に現れた桃源郷といったらよいのだろうか。
(おもしろい所やっ!!やっぱり来てよかった・・・!!)
10時30分、西武秩父駅に到着。東京からおよそ2時間の列車の旅だった。
改札を通って駅の外に出る。迎えてくれたのは晴れ渡った秋の空だった。初日から本当にいい天候に恵まれたことが有難い。青々とした空に浮かぶ雲の姿がとても美しく見えるのは、やはり秩父盆地の澄み切った空気によるものだろうか。とうとう秩父の地に来ることができたのだ。それもこんなに爽やかな秋晴れの日に・・・。
『西武秩父駅。駅前に植えられた木々がとても印象的だった。閑静な駅前の景色にとても合っていて、青い空に映えてとてもきれいに見えた。』