38番札所金剛福寺 境内














【 補陀洛渡海の地・足摺岬の先端に建つ38番札所金剛福寺 】



 新年あけましておめでとうございます。本年が皆様にとってより良き年になるようお祈り申し上げます。


 去る2008年12月29日から今月の元旦にかけて、また四国を歩いてきました。僕にとっては初めての「年越し遍路」となったわけですが、とてもよい体験をさせていただいたと思っています。例年にはない新鮮な気持ちで一年の終わりを締めくくることができ、そして新しい年を迎えることができたような気がします。
 
 今回で10回目となる区切り打ち遍路の旅。前回の打ち止め地点である四万十大橋から足摺岬を経て、土佐の国では最後の札所となる39番延光寺のある宿毛を目指す旅となりました。修行の道場といわれる高知県の遍路も今回が最後となります。そして、これでようやく四国遍路の約半分の行程を終えることができたということで、なにかと自分にとっては意味深い「年越し遍路」となりました。さらには多くの人との出会いもありましたし、沢山の素晴らしい景色にも出会うことができたという・・・、ちょっと忘れられない思い出の詰まった旅となったのでした。

 どういう旅であったのかを前回の遍路の記事(2008年11月23・24日 窪川〜四万十川)のように簡単にダイジェストで(?)振り返ってみたいと思います。



2008年12月29日 中村〜四万十大橋

 前日の28日に高知入りした。夕方の6時12分発の新幹線で京都を出発、岡山から午後8時5分発の高知行き特急南風に乗り四国へと渡る。高知駅に到着したのが午後10時47分。のんびりしている時間もなく、足早に高知駅を後にし南へ向かって歩く。高知橋を渡り城の方角へ向かってフラフラと歩いていく。お目当てはカプセルホテルだ。下調べでは城に近いところに確かあったはず・・・、と思いながら、夜の歓楽街の中を歩く。しかし、結局カプセルホテルは見つからず、適当にビジネスホテルを見つけてチェックイン。既に時間は夜の11時を回っていたが、小腹が空いたので部屋に荷物を置くと、また夜の街へと繰り出す。コンビニでカップ麺と朝食用の菓子パンを買ってホテルへと帰る道中、ふと高知城でも見て行こうかとも思うが、明日の為に自重した。まだ学生だった頃、一人で高知旅行をしたことがあったが、最後の訪問地となったのが高知城だった。思い出に浸りたいという気持ちもあったが、夜でもあったし、一刻も早く寝て日頃の疲れをとっておかないと明日はつらいぞという気持ちのほうが勝った。「なあに、また来ることも必ずあるさ・・・」と高知城との御縁を信じながら、そのままホテルに帰って簡単に食事と入浴を済まし就寝。

 翌朝、ホテルを出発したのは午前8時。あまりにものんびりした旅立ちだが、中村(前回の打ち止め地点の四万十大橋に最も近いJRの駅)行きの特急列車の一番早い発車時間が8時19分だったのだ。仕方がないといえば仕方がない。まあ、お陰でゆっくり睡眠もとれたことだし・・・。何気に体の調子もすこぶる良さそうだ。張り切って人気のない朝の歓楽街の中を勇み足で高知駅に向かう。
 特急「しまんと1号」に乗り中村へ。およそ2時間近い列車の旅となる。須崎駅を過ぎたあたりから土佐久礼の駅まで土讃線は国道56号線に寄り添う形で進むのだが、車窓からは8月に歩いた遍路道の景色を眺めることができた。「あの時は本当に暑かったししんどかったなあ・・・」などとノスタルジックな気分に浸りながら窓辺にへばりついていた。土佐久礼駅の手前辺りで一人の歩き遍路の姿を発見。「同胞」の姿を初めて見つけたことで、嬉しさを感じると同時にモチベーションも上がってっくる。「頑張ってくださいよ。僕も頑張りますから・・・。」そんなことを考えているうちに車窓から遍路道の景色が消えてしまった・・・。影野駅あたりから37番札所岩本寺のある窪川駅まで再び車窓に遍路道の景色が映し出される。仁井田の田園景色など懐かしい風景にまた夏の思い出が蘇る。伊与喜駅から中村までは前回歩いた遍路道に沿って列車は進む。この辺りの景色は記憶に新しく鮮明に思い出が蘇ってくる。中村まではあと僅か・・・。



高知県四万十市 JR中村駅県道20号線を南下






          【 JR中村駅 】                                   

    

          
                              【 県道20号線を南へ進む 】

 中村駅に到着したのは午前10時。また遍路の世界に還ってこれたなという思いと、念願の足摺岬を目指す旅を始められるのだという感動に浸りながら駅の待合室で身支度を整える。白衣を着て金剛杖を袋から取り出すと、いよいよ歩きはじめる・・・・、今回の遍路の旅のはじまりだ。
 国道56号線を進み後川の橋を渡り、その先の交差点から県道20号線に入っていく。ここからひたすら南へ(だいたい南だと思います)約1時間、四万十大橋まで歩いてゆく。
 井沢の集落を過ぎたあたりから右手に四万十川の景色が見え始める。「また出会えたな」と川との再会を喜びながら更に進むと1軒の見覚えのあるコンビニが・・・。スリーエフ(お遍路さんに優しく四国全土を席捲するコンビニである)だ。このスリーエフには前回の遍路で四万十大橋に辿り着く直前に立ち寄った記憶がある。四万十大橋ももうすぐというわけだ・・・。

 午前11時30分頃に四万十大橋の始点に到着。先月から楽しみにしていたが、いよいよ橋を渡ることとなる。そして、川の向こうの未知の世界へ・・・。ここからが今回の遍路の本当のはじまりとなる。この日の目的地は土佐清水市大岐。橋を渡り、そこからおよそ20km歩かなければならない。時間にして6時間くらいになるだろうか。予約を入れた宿に到着するころには、どっぷり日も暮れているだろうが、それも仕方がない。暗い道を歩くのも冬の遍路の醍醐味よと割り切って、むしろ焦らずペースを維持しながら歩いていくことにする。まだ初日、次の日も遍路はつづくのだから、筋肉痛を引き起こすような無理は避けるのがいいだろう。


四万十大橋と再会する四万十大橋を渡る







 【 懐かしい四万十大橋が見えてくる 】      【 いよいよ橋を渡り未知の領域へ 】



 ところで橋の始点に辿り着く直前、休憩所でぐったりとベンチに腰をおろして休んでいた一人の若い歩き遍路に声をかけられた。

 『こんにちは、お気をつけて・・・。』

 精悍な面構えというか、なにか独特の空気をもったその男性。そのときは何気なく挨拶を返して先を急いだのだが、その彼が実は今回の遍路の旅の中でとても重要な役を担ってくれることとなる・・・。