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 道は再び住宅地へと入る。日陰がある分、いくらかは歩きやすくはなったが、体から出る汗の量は変わることはない。ザックを背負った背中は既にびしょ濡れである。水分を摂れども摂れども、アッという間に体から出ていってしまうのだ。滝のように次から次へと流れ出る汗。僕は汗かきなので、常に水分補給をしなければならないのだ。ペットボトルを左手に持ちながら、時折、ボトルのキャップを開けては水を口に含ませながら歩いて行く・・・。

 少しづつだが、暑さというものに体が順応してくるのがわかる。猛暑でスタミナが奪われてしまうのではないかという心配もあったが、奪われるどころか、ますます軽快に脚が動くのである。ようやく脚の筋肉が本来の動きというものを思い出してきたかなといったかんじである。汗の量は相変わらずだ。しかし、水分さえマメに摂っていれば、体は順調に動くし、スタミナが切れることもないようだ。

 しかし、これは単に体が暑さへ順応しはじめたといったことだけではない気もする。なにかに力を与えられている・・・、そんな感覚がある。自分だけの力でこの2本の脚は動いているわけではないような・・・。なにかに後押しされているみたいに思えるのだ。自分の身体能力を超えた力。限界を超えた力。そんなものがいつしか体の中に宿って常に僕の歩きを見守ってくれているような・・・、うまく言えないがそういう不思議な感覚があったのだ。自分とは別の力と一緒に歩く・・・。

 (こういうのを「同行二人」っていうんかな・・・?)

 前回の遍路の旅は杖にすがる有り難さを教えられた。杖と一緒に歩くことが「同行二人」なのだと深く考えさせられたが、今回はまたそれとは異質の「同行二人」を体験していくことになりそうだ。

 不思議なことといえば・・・、風が吹いていたことだ。ただの偶然に過ぎないと言われればそれまでかもしれないが、この日は一日中心地よい風が吹いていてくれた。この風がなければ、早い段階から暑さで体はバテていたかもしれない。有難いことにこの日の遍路を終える最後まで風が途切れることがなかった。「たまたまそういう気象条件に恵まれていただけでは?」と人には思われるかもしれないが、僕にとってみればただの恵みの風というだけのものではなかった。なにかに守られている、そんなふうに思えたのだ。僕を含めて、この日遍路道を歩いていたお遍路さんはとてつもない大きな存在に温かく見守られていたのではないか。

 どんなに辛い状況になっても、目に見えない「何か」がいつも見守ってくれている。遍路道の世界にはそう感じさせてくれることがよくある。


 
 些細な道しるべも見逃さないように、注意深く住宅地の中を歩いて行く。進む方向に戸惑うような場所には必ずなにかしらの道しるべが用意されている。それを見逃せばえらいことになる。
 
 なるべく視野を広く保って辺りをキョロキョロ眺めながら慎重に進んで行く。

 ふと、これまで歩いた道を振り返ってみたくなり何気なく後ろを向くと、少し距離をおいて見覚えのある人が歩いてくるのが見えた。緑のザックに小さな菅笠・・・、あのおっちゃんだ・・・。切幡寺の近くで追い抜いてからどうしたものかと気になってはいたが、元気に歩いておられる。少しホッとすると同時に、「この人とは今日は一日中縁がありそうだな・・・」と微笑ましい気分になった。