2度目の安楽寺への道は、改めて遍路道の風景を僕に見せてくれました。昨日は焦っていて見えなかったものが沢山見えてくる。果樹園の広がる地域があったり、古い神社があったり・・・、昨日は「あ、あんなのがあるな」と簡単に確認したような場所を今日はじっくりと眺めながら歩いていく。

 泉谷橋を渡る。ここも昨日、地元の方に宿の紹介のために引き止められた場所。かなり焦りながら、やり過ごしたという思い出がある。この橋を渡って、更に暫く歩くと県道12号線との合流地点に差し掛かりますが、昨日は間違えて県道のほうにはいってしまいました。遍路道へは県道に入らずに、県道を横切って真っ直ぐ歩いて行けばよかったのですが。

 今日も敢えて県道を歩いて行く事にしました。昨日の自分の足跡を辿ってみたかったのです。急いでしんどい思いをしながら歩いた道を今度はのんびりと歩いてみる、つらい思い出を塗り替えるといった感じでしょうかね。県道の歩道をてくてくと歩いていると向かい側から地元のおじさんが歩いて来て、

 「あともう少しだから、がんばって!!」

 と声をかけてくださいました。

 なによりの励ましに元気が出て、頑張って歩いていますと、

 「こんにちはーーーー!!!」

 と、車道を挟んだ向かい側の歩道の脇を颯爽と自転車に乗ったお遍路さんが大きな声で挨拶してくださいました。

 爽やかな気分になりながら、県道を更に進み、遍路道との合流点から少し歩くと、ようやく安楽寺の山門が見えてきました。


 地蔵寺から約1時間。金剛杖に助けられながらの歩行でしたが、もうほどんど脚の痛みが気にならなくはなっていました。痛みには慣れてきましたが、昨日のように大きく脚を踏み出しながら歩くということはできません。しないほうがいいでしょう。あまり無理をすると夕方まで歩けるかどうか・・・。今日は無理をしないペースを保つのがよい。しかし、仮にもう一日遍路を続けられるとしたら、更に体のダメージが重なって今日よりもつらくなるのでしょうか・・・?そう考えると、通し打ちで歩き遍路をされている方々は、本当に凄い事をされているのだなと痛感します。


 2度目の安楽寺。山門に一礼して境内に入り、なんとはなしに真っ先に本堂のほうを眺めると・・・。

 当たり前といえば当たり前なのですが、本堂の扉はちゃんと開いている・・・!!

 (昨日来た時は、もう閉まってたしなあ・・・。)

 どうでもいいことにホッとしながら、ゆっくりと境内を眺めますと、昨日は少し薄暗かったのと気持ちが焦っていたことで気がつかなかったのですが、山門のそばに大きな池がある。(普通、どんな状況でも気がつくはずなんですがね、こんな大きな池は〈笑〉!!)
 池の中には見事な鯉が泳いでいました。池の中央に小さな橋がかけられていて、橋の真ん中で子供が「パンパン!!」と手をたたいて鯉を呼んでいる。なんとも心和む景色でした。昨日は夕暮れ時で宿坊目当ての参拝客の方などで境内は賑やかだったのですが、今日のこの時間、人気もなく境内は静かで穏やかな空気が漂っていました。

 本堂は近年改修されたのでしょう。真新しい御堂でした。堂内の様子も装飾がきれいで立派なつくりでした。左右に十二神将像が配置され、中央に御本尊の薬師如来様の像。立派な立ち姿の薬師如来様でした。暫く堂内を拝観した後で、ゆっくりと参拝させていただきました。昨日はお会いできなかった御本尊様に、ゆっくりと時間をかけて・・・。

 大師堂に参拝した後、再び本堂に戻り御朱印を貰いました。前にも触れましたが、本堂が納経所にもなっているのです。

 以前お話した、あのお坊さんとの再会を経て、境内を出ました。山門に一礼し、次の目的地、7番札所十楽寺へ向かいます。ここからが、本番ですね!!
 
 時計はもうすぐお昼の12時を指そうとしていました。お腹も空いてくる時間帯です。十楽寺へは、そう距離もない。まずは十楽寺まで歩いてみよう・・・。

 再び金剛杖を突いて歩きだしました。痛みに慣れてきた分、少しは歩く姿もマシにはなっていたかもしれませんね・・・。