少し遅くなりましたが、皆様あけましておめでとうございます。

まずは近況報告をさせていただきます。昨年の12月30日から年が明けての1月4日までの6日間、年越し遍路をさせていただきました。予定していたとおり、第78番札所郷照寺から第88番札所大窪寺、そして第1番札所霊山寺に至る行程を無事に歩ききることができました。実質的にこれが最後のお遍路の旅となったわけで、4年間にわたった区切り打ち遍路もようやく終了しました。長かったようで短かった4年間。人生という長い時間の中では4年という月日は一握りの時間でしかないかもしれませんが、僕の中ではこの4年間の月日はとても得難い時間だったように思えます。お遍路を通じて得たものは何物にも変え難いものばかりで、これからの人生の月日をどう生きていくべきなのかという「道標」を頂けたような気がしています。なにが本当に大切なことなのか、自分の心の有り様はどうあるべきなのか。いや、もっと沢山のことを遍路の旅は僕に教えてくれました。この4年間の思い出はこれからも僕の一生の宝物となっていくでしょう。この4年間の月日に出会えたこと、御縁があったことに感謝したいと思いますし、その御縁をもたらしてくださった全てのことにも御礼申し上げたいと思います。

今年の冬の四国は雪が多いといわれ、大寒波も到来するともいわれていました。どのような旅になるのかとても心配しておりましたが、僕の歩いた香川県(宇多津町より東)は幸運にも初日の12月30日を除けば、晴天続きの天候でした。気温も極めて寒いというものでもなく、とても快適な遍路の旅をつづけることができました。ただ、第81番白峰寺や第82番根来寺などの山中の札所に至る山道には雪が多く残っており、それなりの苦労は伴いましたが・・・。そして、第88番大窪寺に至る女体山の山道は「雪が多くて危険」という忠告をいただいたこともあって、已む無く諦めざるをえませんでした。これが本当に心残りで今でも残念に思うのですが、迂回路である県道がまだ通行可能だったということを考えれば幸運だったのだと感謝しなければならないでしょう。おかげでなんとか大窪寺に辿り着くことができたのですから。もし県道までもが通行不可の状況であったならば、今回の旅で結願という展開にはならなかったでしょう。女体山越えは2巡目(?)の旅の楽しみにとっておくということで今は納得しております。とにかく、本当によい天候のもとで最後のお遍路の旅ができたということを改めて御大師様に感謝したいと思っております。

大窪寺を打ち終え、第1番札所霊山寺までのルートをどうするかは最後まで悩みました。結局、選んだのが大坂峠越えのルートでした。四国路の中の数ある峠道には本当に苦労させられたものでしたが、同時に愛着のようなものも感じるようになっていたのです。遍路の旅の最後の峠道というものを是非味わっておきたい、そんな想いから大坂峠越えのルートを選択したのでした。大窪寺を出発してから2日間の日程を使って第1番札所霊山寺へと無事に辿り着くことができました。懐かしい霊山寺の山門が見えてきたときは、なにやら自分でもわからない感情が込み上げてきて半分顔が崩れていたのではないかと思います・・・。「泣くことは絶対無い」「通し打ちお遍路さんが抱くような感動は決して無いだろう」とタカをくくっていたのですが、そうじゃなかったようで・・・(笑)。

あの込み上げてきた感情はなんだったのだろうと今でも考えます。達成感や、終わりまで歩かせていただいたという感謝の気持ちもあったでしょう。しかし、それ以上に大きかったのは「これで終わってしまうんだ」という寂しさだったように思えてなりません。全てが終わったわけではなく、まだ高野山への行程も残っていますし、四国への御縁もこれで終わりなどとは露ほどにも感じてはおりませんでした。ただ、「自分の1巡目はここで終わり」なのだという紛れも無い事実と向き合うことで言いようもない寂しさが湧き上がってきたのでしょう。しかし、物事には必ず終わりというものがあります。本当にこればかりは仕方のないことでして・・・。考えてみれば、「寂しさ」というものを感じることができる本当にいい旅を体験させていただいたのだなと思います。「寂しさ」を感じることがあの瞬間無かったならば、4年間という月日は自分にとってなんだったのかと自分に問い詰めることになっていたでしょう。

本当に実りのある4年間だったと思います。四国遍路というものに出会えて本当によかった。

自分を四国に導いてくれたもの。そして、四国路を歩く自分を支えてくださった全てのものに心から感謝申し上げます。本当に、本当にありがとうございました。

そして、次に四国を歩くときが来たならば。なにか少しでもそういったものに恩返しができればいいなと考えています。どんな形でもいい。自分のような人間にでもなにかできることがあるのならば、してみたい。大きなことはできないかもしれませんが・・・。
自分が四国で貰ったかけがえのないものを他の人たちにも伝えること。それも「お四国さん」への御恩返しになるのでしょうね。このブログを綴るということもその一環になるのでしょう。つたない文章ではありますが(そして更新もなかなかままなりませんが・・・)、これからも少しづつ自分が体験したことを綴っていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

本年も皆様にとって、よい一年になりますようお祈り申し上げます。
南無大師遍照金剛