気ままに歩いて候。

あせらず、くさらず、歩いていきましょう。 2007年5月の連休から始めた区切り打ちの四国歩き遍路の思い出を綴った記事を中心に掲載しています。

2008年04月

祭りの足音

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 なんとかカプセルホテルを見つけることができた。ここも今回で2度目の利用となる。前回は宿がなくて途方に暮れていたところで、この場所を教えられて本当に助かったのだ。懐かしさと一先ず落ち着くことができるといううれしさで、急ぎ中へ駆け込んで受付でチェックインする。

 こういった宿泊施設は、「必ず泊まれるんだ」という既成概念が僕にはあった。しかし、今回ばかりはどうも勝手が違ったようだ。

 「すいません、あいにく今日は混んでいまして部屋は一杯でして・・・。VIPルームならおとりできますが・・・。」

 予想外の言葉が係りの人から返ってきた。「部屋」とはいっても、大人一人がようやく体を横にできるだけの広さしかない小さな空間だ。そんな「部屋」が何十室もあるはずなのだが、この日は全部塞がっているという。

 「明日から阿波踊りがはじまりますから、観光客の方で今日は部屋が塞がっておりまして・・・。」

 阿波踊りか・・・。

 そう言えば、ここへ来る途中で阿波踊りのポスターをいくつか見かけた。毎年、8月の12日から15日の4日間は此処徳島市街であの有名な阿波踊りのイベントがある。僕はこの歳になるまで一度も阿波踊りというものを直に観たことはなく、以前から観てみたいという気持ちは持っていたのだが、結局そういう機会をつくりきれず今日に至ったわけだ。今回四国に渡ったのは遍路をするためであったので、阿波踊りのことは全く頭になかった。阿波踊りのイベントの期間に入るということも全く認識がなかったのだ。

 (そうか、阿波踊りがあるんやな・・・。是非観てみたいな・・・!!)


 「ところでVIPルームって、どんなんですか?」と係りの人に尋ねると、「形ばかりではありますが一応個室になっておりまして、寝るスペースにロッカーや机などがついているようなかんじの部屋になっております」と説明をうけた。少し割高にはなるが、そこしか空いてないのなら致し方ない。寝る場所があるだけでも有り難いと思わなければ・・・。この分だと恐らく他の宿泊施設も部屋の空きはないだろう。『VIPルーム』への宿泊を決める。

 『VIPルーム』に荷物を置くと、遅まきながら夜食をとるために街へと出かけた。徳島の夜の歓楽街も久しぶりである。遅い時間にもかかわらずに、以前見た時と同様、沢山の人で賑わっている。特に阿波踊りのイベントの前日ということもあって、5月の時と比べると街の熱気がまるで違った。県道136号線にはイベントで使われる雛壇式の客席が組まれていた。そういったイベントの準備の仕事を終えた人たちも街にはあふれていて、「さあ、明日に備えて盛大に飲みにいくぞ!!」というような陽気なエネルギーが街の熱気を更に盛り上げているようだった。

 県道を脇に入ったところにあるラーメン屋で夜食をとる。5月の時もここで夜食をとった。一度通った場所には、ついつい次も行ってしまうものだ。食事をとる時も宿をとる時もそうなのだが、同じ場所に決めて済ませてしまうというのが僕の習性なのだ。やはり、めんどくさがりやなのだろう・・・。店に入って注文したラーメンが出来上がるのを待ちながら、店内の壁に貼ってあるカレンダーを何気なく眺めていた。

 (・・・12日から14日まで遍路をして、予定通りにいけば14日の夜にはまたこの徳島市に戻ってくることになる。うまくすれば、阿波踊りをゆっくり見物できるかもしれへんな。)

 何事もうまく事が進めば、の話である。14日に17番札所井戸寺まで打ち、そこから徳島市街へ戻って、翌日の15日の朝に京都行きのバスにのって帰途につく予定だった。問題は13日の遍路がどういうものになるかだった。12番札所焼山寺へはどれくらい時間がかかるかはわからないが、なんとかだどり着けるだろう。そこから後の展開がどうなるかが、全く読めなかった。下山してどこまで行くことができるのか、宿泊先も全く決めていない・・・。こんなことで本当に大丈夫なんだろうか・・・。阿波踊りどころの話ではないかもしれない。

 店内に何人かのおじさんたちが賑やかに連れ立って入ってきた。明日からのイベントの準備作業に関わっておられた方たちのようだった。祭りの話で店の女主人の方と異様に盛り上がっておられた。楽しそうな会話を聞くにつれて、「よそ者」の寂しさを感じてしまうのだった・・・。

 (やっぱり、観てみたいな・・・。阿波踊りは・・・!!)

 
 話は飛ぶが、この後の14日の夜に僕は無事に徳島市街に帰り着くことができ、阿波踊りを見物することとなる。これもお大師様が僕を助けてくださったお陰だと信じているが、この11日の夜の時点では、そんな未来が待っていることなど予想できず、只々不安だけが重くのしかかっていたのだった。

宿は何処・・・?

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 2007年8月11日午後10時10分、およそ3時間をかけて、京都を出発した高速バスはJR徳島駅前に到着した。

 
 バスが徳島市街に入った時から、なんともいえない気持ちが込み上げてきていた。3ヶ月前に別れを告げた市街地の景色は、まだ記憶に新しい。宿を探して街の中を途方に暮れながら歩き回った徳島での最初の夜を思い出していた。

 (また、此処に帰ってくることができたんやな・・・。)

 独りよがりの感慨にはちがいないだろうが、市街地の景色が「おお、戻ってきたか・・・」と温かく迎えてくれているような気がした。


 バスの乗務員に切符を渡し、下車。再び徳島の大地を脚で踏みしめることができたのだ。うれしくて感動した・・・・、と言いたいところだったが、感動よりも腹の虫が鳴っていた。京都を発つ前に食事らしい食事をとる暇もなかったのだ。バスに乗る前に菓子パン一個しか口にしていなかった。

 (とりあえず、宿に入って、なんか食べにいかなあかんな。)

 荷物を背負って夜の市街地をまっすぐ南へ歩いた。行き先は5月の時にも利用した、あのカプセルホテルである。3ヶ月前の失敗にも懲りず、また碌に宿の予約もせずに四国入りしたのだ。当然、次の日からの宿も予約なんてしていない。成り行き任せで気ままに行こうという、どうしようもないぐうたらな性分は直らないのかもしれない・・・(笑)。

 新町橋を渡って、眉山の手前にある阿波おどり会館が見えてきたあたりから、

 (・・・どやったかな?)

 と脚を止めてしまう。5月にあれほど歩き回った徳島市街だから、歩いていればカプセルホテルの場所は自然に思い出せるはずとタカをくくっていたのだが、ここにきて記憶への不安がよぎった。阿波おどり会館の手前の大通りを左に曲がればよかったのではないか・・・、曲がったすぐのところだったんじゃないか・・・。
 
 とりあえず、大通りを左に曲がったがどうやら見当たらない。うーむ・・・。

 何気に頭陀袋(納経帳や参拝の道具一式を入れていたもの)に手をいれて中を探っていると・・・。

 (あった!!入っててよかった!!)

 それは徳島市街の詳しい地図だった。3ヶ月前に宿探しをしている時に観光案内所でもらったものだ。あれから頭陀袋に入れたままだったのだ。こういう時を予期して入れたままにしておいたというよりは、出すことすら忘れていたと言ったほうがいいかもしれない・・・。

 地図を見ると左に曲がったところまでは正解だったが、更に歩いて大きな県道を一つ渡ったところにカプセルホテルがあったのだ。なにはともあれ、助かった。ヘタをすればまた5月の二の舞になっていたかもしれなかった。自分のぐうたらさが吉と出たというか、これも御導きのおかげかもしれないと感謝した・・・。

京都を発つ

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 2007年8月11日の土曜日、その日の一日の仕事は何事もなく無事終わった。

 僕の勤めている会社は、土曜日は16時が終業時間である。急ぎ帰り支度をして、帰宅。前日に旅の準備は整えていたので、軽く入浴をすませて身支度を整える。数日間留守にする自宅に別れをつげて、近くの駅まで早足で向かった。時間に余裕はあったのだが、うれしさからか何なのか、とにかく気が急いていた。

 今回は菅笠を持参する。前回は初めての遍路ということで気恥ずかしさもあったせいか、菅笠は持って行かなかった。今度の遍路の旅では必需品となるだろう。真夏の強い日差しから身を守ってくれるだろうし、山道を歩く時などは害虫からも首や顔などの頭部を守ってくれる。
 ザックにくくりつけた菅笠が足を速めるたびにブラブラと左右に揺れた。駅へと歩く僕の姿は周りの通行人には異様な姿に見えていたかもしれない。私鉄と地下鉄を乗り継いで京都駅に向かう。駅の構内でも電車の車内でも、周囲の人たちの視線を浴びていたようだった。前回はとても照れくさい気持ちをしたものだが、今回は開き直っていたせいか、まったく気にならなかった。

 
 
 ここで、どういう旅のプランを立てていたかについて話しておきたい。7月の連休に四国行きのプランを立てていたことは以前述べたと思うが、その時のものと大筋は同じものではあったが・・・。

 《初日の12日には前回打ち止めした9番札所法輪寺から10番札所切幡寺を経て11番札所藤井寺まで歩く。2日目の13日には藤井寺から12番札所焼山寺へ、下山して13番札所大日寺まで歩く。3日目の14日には大日寺から17番札所井戸寺まで歩く。》

 ・・・恐ろしくいい加減で大雑把なプランだった。

 初日はともかくとして、2日目からはどういう遍路になるのか予想がつかなかったのである。今回の旅のヤマ場は、なんといっても藤井寺から焼山寺へとつづく山道だ。「へんろ転がし」で有名な、阿波の国最大の難所である。山を二つ半越えて行かねばならないという厳しい道程だ。ネットや本などで遍路経験者がどのようにしてこの道を歩かれたのかという話をできるだけ探して目をとおしてはみたが、やはり自分がここをどんな風に、どれくらいの時間で歩ききることができるのかは皆目見当がつかなかった。そうなると13番札所大日寺までの行程もどうなるものか全く見通しがつかない。
 こうなれば、行き当たりばったりである。とにかく大まかに予定を組んで、それに向かって頑張っていくしかないと腹をきめた。あとは野となれ山となれ・・・、3日目もどうなることやら・・・。

 よって、旅のプランなど、実は無いも同然だった。まさに「ミステリーツアー」である。



 午後7時10分、京都駅烏丸口から徳島行きの高速バスに乗り京都を発った。

 2度目の遍路の旅のはじまりだった。

 
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六根清浄

1969年4月20日生まれ

京都市在住
2007年5月から始めた区切り打ち四国歩き遍路も4年目をもちましてようやく結願いたしました。支えてくださった皆様に感謝です。2巡目の構想も視野に入れながら、さらに日本の各地を「歩き旅」で訪れてみたいと考えています。自称『歩き中毒患者』(笑)


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