気ままに歩いて候。

あせらず、くさらず、歩いていきましょう。 2007年5月の連休から始めた区切り打ちの四国歩き遍路の思い出を綴った記事を中心に掲載しています。

2008年03月

打ち止め

 道は広々とした田園地帯にさしかかり、遠目にようやく法輪寺の屋根が見えてきました。

 「あそこに着いてしまうと、ほんとにもう終わってしまうんやな・・・。」

 早くたどり着きたい・・・。これまでの札所を訪れた際にはそんな気持ちがあったものですが、今回ばかりはどうにも複雑な心境でした。たどり着きたいけど・・・、もう少し遠くにあってくれてもいいのにな・・・。もう少し歩いていたいな・・・。でも、前に進めば進むほど、お寺の姿は大きくなってくる訳で。

 農作業をされている地元の方達に挨拶を交わしながら、一歩一歩噛み締めながら前へ前へと歩く。前へ前へ・・・。そして、ついに山門の前までたどり着いてしまいました。

 
 9番札所法輪寺は、僕の個人的な印象ですが、これまで訪れた札所の中では最も小さく感じられました。そして、素朴で質素な感じ、なにか昔なつかしい雰囲気のある場所に思えました。

 一礼して境内に入りますと、僕の他にも何人かの参拝者がいらっしゃったのですが、なんとも静かな空気が満ちていました。夕暮れ時のお寺の独特の空気とでも言ったらよいのでしょうか。落ち着きがあって、どこかのんびりとしていて、なにか哀愁を感じさせるような、そんな光景でした。
 境内を掃き清める近所のおばさんがいる。元気に走り回る子供達がいる。地元の方が気軽に、心のよりどころとして立ち寄れるお寺なのでしょう。こういう光景を遥か昔に見たような気がしました。僕が本当に小さかった子供の頃に、家からそう遠くない(子供の足では遠かったのですが)場所に神社があって、よくそこで遊んだ記憶がおぼろげながらに残っているのですが、その光景に似ている気がしたのです。だから「昔なつかしい」場所に思えたのかもしれません。僕だけに限らず、昔の子供は神社やお寺の境内で、神様や仏様に見守られながら日が暮れるまで遊んだ経験はあるはずです。此処、法輪寺の境内は、どんな人にも「昔なつかしい」気持ちを抱かせてくれる場所だろうと思います・・・。

 
 ベンチに荷物をおろし、杖立てに金剛杖を立てて、最後の参拝をさせていただきました。結局、般若心経1反唱えるのみというスタイルでここまで通したわけですが、うまく読経することができずに終わってしまったようです。ただ毎回、声だけはしっかり出すことは心がけていました。そして、最後の読経はこれまで以上に自然に声に力が入ってしまいました。

 (いけない、もっとちゃんと読めるようにならないと・・・。練習をして、もう少しマシなお経を唱えられるようにならないと。次までには・・・。)

 
 また来よう、此処へ。この四国へ。できればすぐにでも・・・!

 
 今から思えば、僕が四国遍路というものにどっぷり浸かる日々が始まったのが、この瞬間だったのかもしれません。この「初めての遍路」の旅を始めた時の気持ちですが、正直なところ、「どういう世界なのか、一度触れてみたい。できれば全ての札所を回ってみたいけども、そう急がずに長い年月をかけて回れればいいのでは・・・。」といったものでした。それが現在では「とにかく時間があるのならすぐにでも行きたい、他のことよりも四国遍路や!!」と言った具合になってしまったのです。その心境の変わり目がこの法輪寺で参拝した時だったのでしょう。


 納経所は最近になって建て替えられたものでしょうか。真新しい建物で、境内の雰囲気とはどこか違ったような感じもしましたが、なにはともあれ、墨書きと御朱印を頂きました。丁度、時刻は夕方の5時をまわろうとしていました。区切りよく、ここで「打ち止め」となったわけです。

 荷物の置いてあるベンチに戻り、白衣を脱いで金剛杖を袋の中にしまうと、なんともいえない寂しさがこみ上げてきました。「お遍路」としての自分は、ひとまずはここで終わったのだと。
 周りを見渡せば、いつのまにか参拝者の姿は見当たらなくなり、僕の他には近所に住む子供が2人遊ぶ姿と、その子達を向かえにきた母親達だけになっていました。一日が終わる・・・。夕暮れの哀愁ただよう境内の景色、それが僕の「初めての遍路」の旅の最後の景色となりました。そういう終わりかたも嫌いじゃないですね・・・。


 山門を出て、振り返って一礼。「また戻ってきます」と心の中でつぶやきながら。

 山門から少し歩いた場所に標識が見えました。

 「→10番 切幡寺」と。

 ここから先のへんろ道。僕には残念ながら歩くことは許されてませんでした。

 このつづきは必ず。近いうちに必ず・・・。

 西の彼方に伸びるへんろ道に想いを馳せながら、南の方角に向かって歩き始めました。また吉野川を渡って、麻植塚のホテルに向かうために。ひとまずは遍路の世界ともこれでお別れだと思うと、なんともいえない気持ちになりましたが、必ずこの地に戻ってくると固く心に誓って俗世に還る一歩を踏み出したのでした。



  ● 第九番札所 正覚山 法輪寺
   
   〔御本尊〕 涅槃釈迦如来
   〔御真言〕 のうまく さんまんだ ぼだなん ばく
   〔御詠歌〕 大乗の誹謗も科もひるがえし 転法輪の縁とこそきけ

 

最後のへんろ道を行く

 9番札所法輪寺へ。


 予定通りと言いますか、なるべくしてそうなったと言いますか・・・。

 やはり法輪寺が今回の遍路の打ち止めの札所ということになりそうでした。熊谷寺から歩き出した時間が3時半くらいでしたか。結構、「いい時間」になってしまっていました。脚の痛みで歩みが遅くなったということもあるでしょうが、それにしてものんびりしすぎていたかもしれませんね。特に熊谷寺での滞在時間が長くなってしまいました。あの御詠歌のせいかもしれませんね・・・。
 「法輪寺で今回は打ち止め」といったおぼろげな予定が、のんびりとした遍路にしてしまったのかもしれません。仮に無理に急いたところで、次の札所切幡寺で参拝を終えて墨書と御朱印を貰うことはできなかったでしょうが・・・。
 「のんびり遍路」。これはこれでよかったのかもしれません。時間を気にせず、距離も気にせず。何にもとらわれることのない気ままな時間を過ごすことができた。ただ、ひたすらへんろ道の景色に、札所の空気に向き合うことができたのです。これは、ある意味、とても贅沢な遍路のスタイルだと思うのです。遍路をはじめて2日目にして、このような贅沢な時間を味わうとは・・・。今から思い返すと、「何やってたんや、オレは・・・」と笑ってしまいますが。


 法輪寺へ向かう道が、今回の遍路では最後に歩くことになるへんろ道。最後なんだから・・・。このまま、「のんびり遍路」をつづけよう、そう思いながら歩き出しました。時間は1時間半ほど残されている。急ぐこともない。ゆっくりと遍路の世界と向き合いながら贅沢な時間を過ごしてみてもいいじゃないか。本当にこれが最後なんだから・・・。

 たった2日間だけだったけども、頑張って歩いたこのへんろ道。短い時間でしたが、色々なことを教えてくれた・・・。普段の生活の中で忘れかけていた「優しい気持ち」というものを思い出させてくれた。この道には優しさが詰まっている。道ゆく先で出会った人達の笑顔、気さくに声をかけてくださった地元の方達、道先を教えてくれる様々な道しるべ。「自分は一人の力で歩いてるんじゃない、まわりに力を貰って歩かされてるんだ」、そんな素直な気持ちになれた自分と向き合うことで、今まで何が自分に足りなかったのか、本来の自分って何だ、普段の生活の中では考えても出なかった答えがどんどん出てくる・・・。へんろ道とは、僕にとってはそんな空間でした。

9番法輪寺へ 道しるべ19番法輪寺へ 道しるべ2







9番法輪寺へ 道しるべ3


 



 『様々な道しるべ達。詳しい地図を持たなかった僕でも、これらのお陰で道に迷うことはなかったのです。設置された方々には感謝の気持ちでいっぱいです。行く先を教えてくれるだけではなく、心の在りようも教えて下っているような気がしてなりません。』


 霊場を参拝する、それは四国遍路をする上で最も重要なことであり、御本尊の仏様や大師堂の御大師様にふれることのできるありがたい時間です。しかし、このへんろ道に詰まっている地元の方々の愛情、そして遠い昔にこの道を歩かれた方々の想いにふれる時間をもつということも霊場を訪れる以上の価値があると僕は思います。全ては「大師信仰」が生み出した産物であり、お大師様の人々へ向けられた「慈悲」の心が今もなお生き続いているという証なのです。そういったものに出会う時間は大変有意義なものだと思うのです。

 そんなへんろ道ともお別れのときが近づいてきていました。できれば、ずっと歩きつづけたい、この空間に居続けたい、そんな名残惜しさがありました。
 
 「明日の朝には帰宅の途につかなければならない、故に今回は法輪寺まで・・・。何故、明日の朝のバスの便をとってしまったのだろう。もう少し遅い時間にすればよかった・・・。」(朝の便しか予約がとれなかったという事情もありましたが。)

 せめて一歩一歩心に刻みながら歩いて行こう。

 

 2日間、僕を支えてくれた金剛杖。杖との二人同行も、もうすぐ終わってしまう。

 杖よ、この2日間ご苦労さん。また近いうちに必ず一緒に歩こうな。


 
 

 

URL変更と姉妹ブログ開設のお知らせ

 4月より、ブログのURLを

 http://kimamaniaruite.livedoor.biz/

 へ変更いたします。よろしくお願いいたします。


 
 この度、ブログをもうひとつ開設いたしました。

 『忙中閑(かん)あり、庶事に華あり』  http://taku2008.blog27.fc2.com/

  
 これまで掲載していた「サッカー」など娯楽関連のカテゴリーを新たなブログに移転させました。そもそも『気ままに歩いて候。』は四国遍路の体験記や関連事項、また様々な場所(主に京都)を歩いて感じたりしたことの記事を中心に展開して行こうと思って開設したものですが、「最近どうもコンセプトがずれてきているのではないだろうか・・・。」と、以前から大変気になっていました。娯楽関連の記事は「サッカー」以外のことも色々掲載していきたいということは前々から考えていたのですが、「歩いて感じる」ことを中心にしたブログにあまり色々な分野の話を載せてしまっては、ブログのもつ雰囲気というものが崩れてしまったり、統一感がなくなってしまったりするのではないか・・・。そんな心配がありましたから、とりあえずは「サッカー」関連の記事だけにとどめていましたが、それもちょっと無理があるかなと感じ始めたのです。いっそのこと、ブログをもうひとつ開設して、そっちのほうで思い切り色々な記事を載せればいいのでは・・・、そう決心して新ブログを開設しました。
 
 『気ままに歩いて候。』は今後は四国遍路や京都巡り、また様々な場所を歩いて感じたことの記事を中心にしたブログとしてやっていくつもりですので、今後ともよろしくお願いいたします。

 姉妹ブログ『忙中閑(かん)あり、庶事に華あり』のほうも、サッカーのカテゴリーだけではなくて、色々な分野の話を掲載していきたいと(独り言とかが多くなるかもしれませんねえ・・・)思いますので、どうぞよろしくお願いいたします!!



六根清浄

1969年4月20日生まれ

京都市在住
2007年5月から始めた区切り打ち四国歩き遍路も4年目をもちましてようやく結願いたしました。支えてくださった皆様に感謝です。2巡目の構想も視野に入れながら、さらに日本の各地を「歩き旅」で訪れてみたいと考えています。自称『歩き中毒患者』(笑)


my favorite music
最新コメント
訪問者数

登録サイト一覧 次のサイト 前のサイト 登録 ランダム
  • ライブドアブログ