気ままに歩いて候。

あせらず、くさらず、歩いていきましょう。 2007年5月の連休から始めた区切り打ちの四国歩き遍路の思い出を綴った記事を中心に掲載しています。

2008年02月

熊谷寺へ向かう

 十楽寺を後にして、次の札所の8番熊谷寺へ向かいます。時間は昼の1時を少し過ぎたくらいでした。遍路のガイドブックを見ますと、十楽寺から熊谷寺までは歩きで約1時間(4km)、熊谷寺から9番札所法輪寺までは歩きで約45分(2.7km)とあります。更に法輪寺から10番札所切幡寺までは1時間20分(5km)と書いてあるのですが、当初考えていた通り、今日は法輪寺まで歩くのが精一杯だろうと判断しました。移動時間だけを考えれば、切幡寺までは約2時間あれば歩ききれる。参拝も手際よく行えば、夕方の5時までには切幡寺に着いて御朱印と墨書きをいただけるかもしれません。ですが・・・。

 今日の脚の状態を考えると、とてもじゃありませんが、ガイドブックにあるような標準的な速さで歩くことは無理でした。そして、「手際よく参拝をする」というようなことにも抵抗がありました。心のこもらない形だけの参拝になんの意味があるのか。そして慌しく歩くこと、周りの景色や道で出会う人たちになんの関心も持たずにひたすら先を急ぐというのはどういうものか。昨日、学んだことを無駄にしたくはない。自分にとって意味のある遍路をしたい。今日、できる限りたくさんの札所を回ったところで、「感じること」がなければ、ただのスタンプラリーにすぎない。「どれだけ歩けるか」にこだわるのではなく、「どれだけ感じ考えることができるか」に主点を置いて遍路をするならば、余裕というものがなければならない。そんなことを考え、やはり今日は、今回の遍路は9番札所法輪寺で打ち切るという形にしたほうがいいと思ったのです。ゆっくり歩いて、ゆっくり感じて・・・。少しでもなにかを学んで日常の生活に持って帰れれば・・・。

 法輪寺までは約6.7km。納経所が閉まる夕方の5時まではまだ4時間ちかくありました。かなりの時間が残されていますから、あせる必要もありません。痛みの残る脚に無理な負担をかけずに、ゆっくり歩いて、まずは熊谷寺を目指します。

 
 しばらく行くと、車道とへんろ道の分岐点に出ましたが、ここは努めてへんろ道のほうを選んで歩くことししました。僕の持っているガイドブックの地図では若干へんろ道のほうが距離が長いように思えましたが・・・。(実質はあまり距離は変わらないかもしれませんね。)なんせ、時間はたっぷりあります。せっかくのへんろ道なのですから、のんびり景色を楽しみながら歩きました。

 「そういえば、カメラ持ってきてたな・・・。」

 四国に行ったらなるべく風景を撮ろう・・・、そう思って持参していたデジタルカメラでしたが、ここにきてようやく使う気になったというところですか・・・。今までは歩くことに懸命でザックの奥に仕舞いこんだカメラを取り出すのも億劫になっていたのですが、まあ、せっかく持ってきたのですから、何枚かだけでも撮っておかないともったいない。ザックを道端におろして中をかき回して一番奥に仕舞い込んでいたちょっとレンズの大きめなデジタルカメラを取り出しました。しかし・・・。

 「こういう形のカメラは歩き遍路には向かんなあ・・・。」

 持ち歩くのには少し負担がある。せっかく取り出したカメラですが、また仕舞ったり取り出したりするのも面倒でした。

 「画質は落ちるが、ケータイの写メでええか・・・。」

 利便性を考えて、結局携帯電話のカメラを使うことにしました。

 熊谷寺への遍路道にて へんろ道保存会の標識

 

 『歩き遍路の記念すべき1枚目の写真がこれ。8月以降の遍路から頻繁に写真を撮るようになるのですが、この写真が原点なんですねえ・・・!!』

 熊谷寺への遍路道にて 「橋を渡る」


 



 


 『橋を渡る。恐らく御所大橋という橋ではなかったかと思うのですが・・・。この時はなにもわからず杖をつきながら橋を渡っていました、なんてことを・・・。』


 
 結局、持参したデジタルカメラの出番はこれ以降もなく、無駄な荷物となってしまいました。余談になりますが、この先の8月に行った歩き遍路から頻繁にへんろ道の写真を撮るようになります。すべて携帯電話のカメラで・・・。

熊野神社、十楽寺へ

 昨年の5月の遍路体験記のつづきをはじめたいと思います。安楽寺の参拝を終えて、十楽寺へ向かうあたりの話からはじめていきます。 


 十楽寺への道程は、そんなに距離もなく時間もかかりませんでした。安楽寺の山門から県道12号線へ出る。県道を少し歩いて右手の脇道に入る。静かな村落の中をしばらく歩いていくと、まもなく十楽寺が見えてくるのですが、途中、立派な神社を見かけたのでした。

 門には熊野神社とかかれている。四国に来て熊野神社を見るのは、これが初めてでした。熊野神社と言えば、わが地元京都にも東山七条下がる今熊野の地に新熊野神社、東山丸太町上がる聖護院の地に熊野神社の二社があります。熊野信仰について知識のなかった子供の頃は、「熊野」という地名は京都にしかないものだと、とんでもない勘違いをしていたものでした(笑)。「熊野」という名称にはそういう事情もあって親しみを感じています。
 昔から神仏両詣りがお遍路の慣しとか。この神社を訪れた時の僕は、恥ずかしながら、こういう慣しについて知識がなかったものですから、参拝はしませんでした。ただ、この神社の立派な佇まいに暫くの間脚を止めて眺めていました。


 程なく歩いて7番札所十楽寺の山門が見えてきました。丁度、正午を過ぎた頃でしたので、そろそろ昼食でもとりたいなと辺りを見回すと、御寺の向かい側にうどん屋さん(だったと思うのですが・・・)がありましたので、「まずは参拝を済ませて、それからあそこで御飯にしようかな」と思いながら、山門をくぐり中に入っていきますと・・・、御寺が経営されている食堂がある。

 (ああ、もうここで食べてしまうか・・・!!)

 やはり空腹を抱えながらの参拝はよくない、まずは腹ごしらえと思い直し、食堂のドアを開けて中に入ってみますと・・・。広くて綺麗な食堂でしたが、店員の姿も見えずお客さんも一人もいない・・・。

 (あー、ひょっとして個人で入ったらあかんところやったんかいな・・・。)

 しまったと思いながらも、入ってしまったからには食べるしかあるまい、バチは当たるまいと思い、荷物をイスに置き、店員さんが出てくるのを待っていましたが、出てこられる気配もなく・・・。
 ふと、テーブルに呼び鈴があるのを見つけたので、なんの気なしに押してみると・・・。かなり!!大きな音が鳴ってしまったのでした!!慌てて奥から店員の女の子が飛び出してこられたので、

 「・・・すいません、・・・カレーライスいただけますか??」

 と、仕方なく注文させてもらいました。

 うーむ・・・、やはり個人客対象の食堂ではなかったのでしょうか・・・。また失態を犯してしまったかと悔やみつつも注文したからには食べるしかあるまいと開き直って食事ができるのを待っておりました。

 辺りをみると、壁に弘法大師、お大師様の大きな肖像画が飾られていました。それを見て・・・。そういえば、自分は弘法大師空海という人について、どれだけのことを知っているのだろうか・・・、ふとそんな根本的な疑問が頭に浮かんだのでした。遍路道を歩きながら、「お大師様、お大師様」と心の中でつぶやいてはいましたが、本当にどういう人だったかをちゃんと理解できているのだろうか・・・、おおまかに、どういう人生を送られたかということについては、だいたいわかっていたつもりでしたが、例えばお大師様の仏教観、生前に記された幾多の書についてなど、まだまだ深いところまでは勉強し足りないのではないか・・・。そういうことを勉強して遍路をすれば、よりお大師様を身近に感じることができるのではないか・・・。改めて、自分の浅はかさに反省させられました。今回はもう仕方ない、でも次に四国に来る時は、もう少しお大師様について勉強しておこうと思ったのでした。

 食事を済ませ、一通り参拝を終えたあとで、さて納経所はどこにあるのかなと辺りをキョロキョロしていますと、近くのベンチに座っておられたおじさんが、「納経所だったら、あっちだよ」と気さくに声をかけてくださいました。そのおじさんは荷物を持っておられない御様子から、車で札所を回られている方のようでしたが、手段こそ違え、同じお遍路さんです。同じ仲間なのです。どこの札所でもそうですが、同じ仲間同士、助け合っていこうじゃないか・・・、そういう温かい雰囲気というのがあるのです。本当にありがたい事で、また元気をいただいたなという気持ちになれる。そして、こちらもなにかできればなと・・・。普段の生活の中では忘れてしまっていた「慈愛」の気持ちというものが自然に湧き出てくるのです。こういうところも遍路の世界の魅力のひとつといえるでしょう。願わくば、普段の生活の場でも、こういう気持ちをもちながら日々生きていきたいものですが・・・。

 

 ● 第七番札所 光明山 十楽寺
   
    〔御本尊〕 阿弥陀如来
    〔御真言〕 おん あみりた ていせい からうん 
    〔御詠歌〕 人間の 八苦を早く離れなば 至らん方は九品十楽

今年の初遍路に行ってまいりました!!


土佐街道を行く-1
 この連休(2008年2月10日・11日)に、今年初めての四国遍路に行ってまいりました。23番札所薬王寺から室戸岬にかけて延々と続く土佐街道、その約半分を歩く旅でした。今回はひたすら「歩く」遍路になりました。

土佐街道を行く-2
 うまく休みがとれれば、次に四国に行くのは5月の連休。そこで一気に室戸岬を越えようと思っています。今回の遍路は、5月のための布石というかんじでしょうか。布石となってくれればよいのですが・・・。


土佐街道を行く-3
 今回の旅で一番楽しみにしていたのは鯖大師に参拝することでした。以前から、ずっと行ってみたかった霊場でしたから。念願かなって、無事参拝を終えることができました!!



 徳島と高知の県境を越えて甲浦まで行きたかったのですが、時間の都合で宍喰で打ち止めとなってしまいました。まあ、でも室戸岬越えの目途が少しはついたかなと自分では思っています。次の遍路が楽しみです。
 
 今回の旅の体験記は、いずれ詳しく掲載するつもりです。まだまだ先になりそうですね、昨年の5月の体験談で未だに手こずってますから・・・。なにはともあれ、今回もいい遍路をさせてもらいました。



六根清浄

1969年4月20日生まれ

京都市在住
2007年5月から始めた区切り打ち四国歩き遍路も4年目をもちましてようやく結願いたしました。支えてくださった皆様に感謝です。2巡目の構想も視野に入れながら、さらに日本の各地を「歩き旅」で訪れてみたいと考えています。自称『歩き中毒患者』(笑)


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